小田急バス私設ファンクラブ・実録シリーズ

小さな急行バス、嵐の船出

=新宿駅西口発よみうりランド行き処女便乗車記=


 ▲よみうりランド正門前で待機するA203号車

 「新宿〜よみうりランド線が開業するよ」−。ある筋から仰天情報を受けたのは、8月の暑い日のこと。かつて長距離バス路線がブームだったころ、若林営業所の担当で運行された新宿駅西口〜調布〜よみうりランド線が、30年間の休止を経て復活するという話でした。
 折しも小田急バスは創立50周年、記念行事としてあり得ないことではないものの、新路線の開業時に必ず出る「お知らせ」は一向に路線バスの車内に掲示されません。開業2日前に新宿駅に立ち寄ってみても、時刻表などは宿44系統だけであり、これでは誰も知らない幻の新路線になってしまう…。一抹の不安を抱きつつ、開業日とされた9月17日朝、小田急ハルク前の乗り場に立ちました。

乗客の出現に運転士びっくり!?

 果たして午前9時55分、「よみうりランド」の字幕を掲げたエルガミオ・A203号車が乗り場に入ってきました。思わず駆け寄って乗り込むと、運転士の桜井さんがびっくりしたような面持ちで「よみうりランド行きですよ」と念を押しました。
 「乗り場に時刻表が出ていないので、来るのか不安だった」と話すと、同乗していた乗合課の片山さんもいったん降りて停留所を確認、「あれ、本当に書いてないや」。直ちに桜井さんが営業所に電話し、手配していました。秘密の系統でわざと掲示していない…わけはなく、単なるミスだったようです。


 ▲新宿駅発車直後の室内

豪雨の甲州街道を突っ走る

 というわけで、バスは新宿駅を定刻通り発車。乗客は筆者1人だけで、新宿〜ランド線復活の処女便に乗った世界唯一の人物となりました(自慢)。
 ここ数日、東京は台風の余波で天気が荒れており、甲州街道・大原交差点を抜けるあたりから激しい雨に見舞われました。しかし、この空模様では行楽でもないのか、道路の流れはスムーズ。ダイヤ通りの時間で上高井戸1丁目から旧道に入り、烏山停留所を通過すると、対向してきた下本宿発成城学園前駅行きの狛江車が「おやっ?」という表情をしながら挙手を交わしていきました。


 ▲横なぐりの雨の中を進む(上北沢付近)

ランド到着は早め、しばし休憩…

 バスが調布駅付近に差しかかると、同僚・吉祥寺営業所の車が何台もすれ違います。相手の方も、一瞬「あれ、お客さんいたんだ!」という表情をするのが面白くもあり、若干寂しい気もします。せっかくの急行便復活、京王線の運賃より安い点を、PRしても悪くないと思うのですが…。
 片山さんによると、特にこの路線を大宣伝する計画はないのだとか。「休日だけの運転だし、バスは時間が読めませんからね…」
 しかし、渋滞の名所である鶴川街道の調布〜矢野口間が、今日に限って混雑なし。バスは極めて順調に多摩川を越え、峠を登って、予定時刻の15分前によみうりランド正門前に到着しました。いつもこうなら、吉07だって減便せずに済んだことでしょう。
 筆者はしばらく桜井さん、片山さんと雑談した後、新07系統のE8114号車に乗って、よみうりランドの山を下りたのでした。

(取材日=2000年9月17日)


  ▲読01系統の貸切兼用E710号車と並ぶA203号車


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